
今回は、アメリカの公立小学校の「幼稚部(Kindergarten)」に焦点を当てて、英語が第二言語(English Language Learner / ELL)の子どもたちにどんなサポートがあるのかを、実体験も交えてご紹介します。
英語が話せなくても大丈夫?「ELL」って何?
アメリカでは、移民や国際家庭など多様な言語背景を持つ子どもたちがたくさんいます。そのため、英語を母語としない子どもたちへの支援体制が整っており、「ELL(English Language Learner)」と呼ばれています。
特に幼稚部では、英語をまったく話せない子も多く入学してきますが、先生たちはそういった子どもたちに慣れていて、「まずは安心して学校に慣れること」を大事にしてくれます。
入学時に行われる「言語評価テスト」
英語以外の言語を家庭で使っている場合、入学時に「Home Language Survey(家庭言語調査)」を提出し、必要に応じて言語スクリーニングテストが行われます。
カリフォルニア州の「ELPAC」とは?
私が住むカリフォルニア州では、英語学習者の英語力を測るために、ELPAC(English Language Proficiency Assessments for California)という州共通のテストを実施しています。
- Initial ELPAC: 入学時に行われる初期評価。ELLサポートが必要かどうかを判断する。
- Summative ELPAC: 毎年春ごろに実施される総合評価。サポート継続か終了かを判断する。
Kindergartenで評価される4つの分野
ELPACは年齢に応じて内容が調整されており、Kindergartenでは次の4分野で評価されます:
- Listening(聞く): 絵や指示を使い、内容理解を確認
- Speaking(話す): 名前、好きなこと、物の説明など簡単な会話
- Reading(読む): 絵本や単語を見て理解する力(初期段階は視覚的中心)
- Writing(書く): 名前を書いたり、絵に言葉を添えるなど簡単なアウトプット
テストは個別に行われ、先生とのやりとりに近いため、子どもたちはプレッシャーを感じにくいよう工夫されています。
ELPACのスコアレベルと評価基準
ELPACのスコアは数値で表示されますが、実際には以下の4段階で総合的に評価されます。
レベル | 英語力の目安 |
---|---|
Level 4 | Well Developed(英語力が十分) |
Level 3 | Moderately Developed(中程度) |
Level 2 | Somewhat Developed(一部が弱い) |
Level 1 | Minimally Developed(初期段階) |
ELLを卒業するための条件とは?
英語力が一定レベルに達すると、ELLのサポートを終了し、通常のクラスのみで学習できるようになります。このプロセスを「Reclassification(再分類)」と呼びます。
▷ 再分類(Reclassification)の基準
カリフォルニア州では以下の条件を満たすことでELLから卒業できます。
- ELPACの総合スコアがLevel 4(Well Developed)
- 学力テスト(CAASPPなど)で英語科目のスコアが基準を満たす
- 担任教師の評価で「英語での学習に問題なし」とされる
- 保護者の同意があること
※学区によって、Level 3で卒業できる場合もありますが、多くの場合Level 4が目安とされています。
ELPACスコアの「満点」について
ELPACには「○点が満点」という明確な数字は公表されていませんが、スコアは1,500点台〜1,700点台の範囲で表示されます。
Level 4に該当するのは、おおよそ1,520点以上が目安とされており、これがELL卒業に向けた基準とされています(年度や学年により若干の差あり)。
まとめ:ELLサポートは子どもの英語力に合わせて段階的に終了できる
アメリカの学校では、英語を第二言語とする生徒への支援がとても丁寧です。
毎年のELPACを通して英語力が評価され、一定の基準を満たせばELLから卒業して通常クラスへ移ることができます。
我が家もキンダーの時点ではまだELLが必要と認定されました。最初は心配する気持ちが出て来ましたが、丁寧に英語を教えてもらえる機会と前向きに捉えています!
実際のサポート内容は?
ELLサポートの内容は、学校や地区によって異なりますが、一般的には以下のような支援があります:
✔ 少人数グループでのPull-out指導
ELL専門の先生が週に数回30分〜1時間ほど、子どもをクラスから連れ出して、少人数で英語指導を行います。
✔ 教室内でのPush-inサポート
通常授業の中にELLの先生が入り、必要に応じて支援を行います。
✔ 視覚教材やジェスチャーを活用した授業
絵や写真、ジェスチャーなどを使って、言葉の壁を超えて伝える工夫がされています。
✔ バイリンガルスタッフの活用(可能な場合)
スペイン語、韓国語、中国語などが主ですが、学校によっては通訳スタッフが配置されていることもあります。
保護者へのサポートも
移民の多いカリフォルニアの学区では、多くの場合日本語を含む多言語対応がされています。レポートカード(成績表)や学校からのお知らせは日本語に翻訳されたものがもらえることもあります。
また、面談時には日本語通訳の手配も可能な場合があり、学校側に事前に依頼すれば対応してくれます。
まとめ:ELPACとELLサポートで安心の環境
アメリカの公立学校では、英語が話せない子どもにも丁寧で包括的なサポート体制が整っていることが多いと思います。ELPACはその英語力を客観的に判断する大切なテストであり、個々に合わせた支援につながっています。
これからアメリカに移住予定の方、またお子さんを現地校に通わせる予定の方にとって、少しでも安心材料になれば嬉しいです。
コメント